« 妄想力学 可飽和リアクトル整流器 | トップページ | 9.11テロ20年 »

2021年9月10日 (金)

抵抗力学 トランス磁気ギャップの理解度

2109051スイッチング電源に携わったのは1990年代だから、結構歴史は長い。その当時はスイッチング電源の専門家に設計をお願いしていたから、説明を受けても「ふ~ん」程度だった。1人プロジェクトxでスイッチング電源のトランスを設計するようになるが、簡易計算式で何となく出来てしまい深く考えない。オーディオ用で評判の良い磁気ギャップ付きのファインメットコアの出力トランスを使った。ところが水晶粒3次元接触防振構造を採っても、音は良くない。日立金属さんが誇るファインメットだが、一体なぜ?

2109054こっちはΦ350mmトロイダルコアの出力トランス試作機で、水晶粒3次元接触防振構造のチカラもあるがファインメットより音は良い。ファインメットは毛みたいな細いポリウレタン線だが、Φ350mmはΦ1.0mmのofc純銅ポリウレタン線にカルダスケーブル3.5スクエアを巻いているから、当然とも言える。

2109053ようやく納得し気持ちは晴々した。ファインメットやアモルファスは高透磁率の素材だから、小型にできる。小型にすると「磁気抵抗=長さ/断面積x透磁率」の計算式から磁気抵抗が極端に小さくなり、直ぐに磁気飽和してしまう。だからギャップを設けて磁気回路を長くしたのと等価にしている。早い話、小型に出来る代償が磁気ギャップと言える。

2109054_20210910075201ん?そうだ小型となれば画像のmcトランスだ。ウエスタンエレクトリックの傑作インプット・トランスwe-618bは電磁鋼板に80%supermalloy(高性能パーマロイ電磁鋼板、高価なニッケルが80%含有)を使っている。これも性質上小型にせざるを得ないから80%supermalloyになっている。ハム対策さえ出来ればΦ350mmスーパーコアのΦ1.0mmofc純銅ポリウレタン線にカルダスケーブル3.5スクエアの磁気ギャップ無しで勝負できる。

21090532ここでファインメットのデータを見てみよう。データは日立金属さんから借用しました。我らが使っているsi電磁鋼板は赤丸印、飽和磁束密度は一番高いが比透磁率3,000程度と低い。黄色丸印のファインメットの飽和磁束密度はsi電磁鋼板よりは少し低いが、比透磁率はアモルファス並みの200,000と高い。これは人間のキャラと同じで個性だからどっちが良いとはならない。しかしです、日立金属さんのファインメットはアモルファスやパーマロイを凌駕しており凄い電磁素材で、さすが贔屓の日立。ここで注目すべきは磁束密度の最大2t(テスラ)で、これがsi電磁鋼板とは心強い。

21090531以前高価なΦ350mmスーパーコアに磁気ギャップを付ける実験を行った。元々磁気抵抗が若干大きいものを極端に大きくしたため、インダクタンスがまるで取れず失敗した。ただし磁気ギャップが付けられないのではなく、Φ350mmの径で0.1mmのギャップ加工は難しく、素人細工では無理でした。高価なΦ350mmを1個ダメにしたが、開発には尊い犠牲はつきものです。

2109052大型のトロイダルコアは何のメリットがあるのか?そりゃあアナタ、Φ1.0~2.0のofc純銅ポリウレタン線やカルダスケーブルの3.5スクエアが巻けて、電気抵抗は圧倒的に少なく、且つ水晶粒防振が可能となる。それに難しい計算式や、理解するのに時間が掛かる伝統的暗黙や、経験則は必要なく、素人細工でトランスが作れてしまう、いいこと尽くめだと思いますがね。

|

« 妄想力学 可飽和リアクトル整流器 | トップページ | 9.11テロ20年 »